定年後の年金受給額に唖然…59歳・会社員の身に立ち込める「老後生活の暗雲」
2022/11/10
https://gentosha-go.com/articles/-/46690
「老後2,000万円問題」が叫ばれて久しい昨今、定年後を見据えた資金形成は喫緊の問題となっています。今回は、FP事務所ストラットの代表である伊豫田誠氏が、「年金制度」「退職金制度」「自己資産」の3つの観点から、資金計画を立てるうえで押さえておきたいポイントについて解説します。
◆定年退職後も人生は30年以上…考えておきたい「老後の資金計画」
2025年4月から65歳までの雇用確保が義務となります。とはいえ人生100年時代のリスクは思いがけないほど大きく、定年を65歳としても100歳まで残りの人生は35年と非常に長期です。
20歳から55歳までの35年間を思い返すと、多くのライフイベントがあったことでしょう。就職や結婚、出産、マイホームの購入、子供の受験や結婚……なかには孫まで生まれた人もいるかもしれません。それだけの年数が60歳以降にも控えているということは、金銭面でたいへん大きなリスクになります。
これまでのように、1つの企業に定年まで勤め上げ、その後は退職金と年金で悠々自適な老後生活を過ごすといった計画はいまやとうに過去のモデル。このような計画では「資金不足」が予測されます。
いざ老後をむかえたときに「そんなの知らなかった!」と後悔しないためにも、まずは定年を迎える時点での資金計画を把握することが重要です。
◆資金計画づくりのチェックポイント①年金制度
資金計画を把握するうえで最初に確認したい点は、定年後に受け取れる年金の金額です。これは「年金定期便」で確認することができますが、個々の状況で大きな違いがありますので必ず自分で確認しておきましょう。
年金給付額は、基本的に賃金や物価の上昇率などの改定指標を乗じて給付額が決められますが、令和2年における年金の平均給付額は下記になります。
国民年金:約5.6万円
厚生年金:約14.4万円
(出所:厚生労働省 令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況)
厚生年金の平均給付額は約14.4万円ですが、実は10年前より約2万円も減少しているという厳しい現実があります。
国家予算の一般会計で約3分の1を占める社会保障費(年金・医療・福祉)は36兆円を超え、15歳~64歳の生産年齢人口の7,450万人で負担すると考えると、社会保障費は1人当たり年間約48万円(毎月約4万円)の負担になっています。
しかもこの社会保障費は毎年約1兆円のペースで増加している一方、出生率低下に伴う生産年齢人口の減少と65歳以上の人口割合が30%を超える未来は避けられません。今後充分な社会保障が受けられるかは不透明です。
◆資金計画づくりのチェックポイント②退職金制度
次に確認したいのは退職金です。自分が勤めている会社に退職金制度があるのか無いのか、あるのなら退職時にいくら受け取れるのかを把握しましょう。
退職金制度は主に
・退職一時金制度
・確定給付企業年金制度
・企業型確定拠出年金制度(企業型DC)
・中小企業退職金共済
と4種類あります。また、受け取り方には一括で受け取る「退職一時金」と、分割で受け取る「企業年金」と2つの受け取り方があるので、自分が勤めている会社がどちらのパターンなのか、またはどちらも選べるのかを調べておくことが重要です。
一般的には、勤続年数が長期になるほど支給額が大きく上がっていきますが、実際の金額は会社の「就業規則」や「賃金規程」などに記載されていますので必ず確認しておきましょう。
令和元年の厚生労働省の調査によると、卒業から定年退職まで勤めた場合の退職金の相場額は、
<大企業>
大卒:約2,200万円
高卒:約2,000万円
(出所:厚生労働省 令和3年賃金事情等総合調査)
<中小企業>
大卒:約1,100万円
高卒:約1,000万円
(出所:東京都産業労働局 令和2年中小企業の賃金退職金事情)
となっています。
注意したいのは、退職金にも所得税と住民税が引かれ、一括で受け取る場合と、分割で受け取る場合とで金額が少々異なるという点です。ここも必ず確認しておきましょう。また会社の倒産等で、支給額の減額があったり、最悪の場合は受け取れないことがあるかもしれませんので、ここについてもしっかり確認しておく必要があります。
◆資金計画づくりのチェックポイント③自己資産
最後に確認することは、定年までに自己資産をどれだけ準備できるかです。以前、2019年に「老後資金2,000万円では足らない問題」が話題となりましたが、本当に足りないのか、実は足りるのかは、もちろん個々の状況で異なります。もし退職金と年金支給額の範囲内で生活できるのなら、過度な貯金は必要ないかもしれません。
総務省の家計調査によると、一般的な生活費の平均は下記になります。
<2020年度、65歳以上の夫婦のみの無職世帯>
・合計消費支出:224,390円
【内訳】
食料:65,804円
住居:14,518円
光熱・水道:19,845円
家具・家事用品:10,258円
被服及び履物:4,699円
保健医療:16,057円
交通・通信:26,795円
教 育:4円
教養娯楽:19,658円
その他の消費支出:46,753円
(出所:総務省統計局 令和2年家計調査年報家計収支編)
年金と退職金の範囲内で、老後生活費をまかなえればいいのですが、これは最低限の金額で、ゆとりある老後生活費は毎月約36万円とされています。また、いまのペースでインフレが進むと、20年後には物価は1.5倍に達している可能性がありますが、年金給付額は物価上昇に見合うだけの増額は望めないでしょう。
さらに懸念すべきは、貯金や退職金等の現金はインフレに比例して価値が下落するばかりか、使えば無くなってしまうし、使わなければ多くのお金を残してこの世を去ることになるかもしれません。
◆まだ間に合う!…視野に入れたい「不動産投資」
簡単に老後資金をいまより多く準備できるのならそれに越したことはないですが、さらに貯金・保険・投信などで資産を増やすには限界があると思います。これらは、いま我慢して節約した分を老後に使うだけで、使える金額を大きく増やせるわけではありません。
筆者の事務所にも、もうすぐ60歳を迎える定年前のサラリーマンの方々が「あんなに働いたのに……年金がこんなに少ないとは思わなかった。老後の資金はどうすればいいですか」という相談がきますが、この時点で無対策の場合、できることが限られてきます。
しかし、定年を目前にして策が無いかといえば、そうでもありません。「無い袖は振れない」と思いがちですが、不動産投資を活用すれば老後資金にゆとりが作れるかもしれません。
たとえば、次のような物件を「現金で購入」した場合にはどうでしょうか。
・ワンルームマンション(約25平米)
・築15年の中古物件
・東京23区内
・最寄り駅から徒歩5分
・物件価格2,000万円
・表面利回り4.5%(実質利回り4.0%)
※空室リスクが低い、4%前後の物件を参考としています。
物件価格2,000万円に対して、実質利回りで4.0%が確保できれば、年間の家賃からの使える収入は80万円になります。単純計算で、25年間で2,000万円の年金的な収入となり、定年後25年以上長生きできれば、現金を切り崩していくよりお得になります。仮に家賃の下落や修繕費用などで収入が落ちたとしても、物件自体の価格が25年後でも1,000~1,500万円は確保できると予測できるため落ち込みをカバーできます。
また、現金が無くても定年前で会社に在籍中ならば、50代の人でも満85歳までの返済計画で不動産を購入することも可能です(物件や個人の状況によって異なります)。
定年前に銀行融資を活用するか、活用しないかで、老後資金に数千万円の差が生じる場合があります。これは非常に重要で必ず考えておきたい点です。過去の実績でも10年ほどの運用で1,000万円ほどの売却益を得ることができたケースもあります。また、万一があったときには家族に無借金の不動産が残ります。
収入を増やしにくい時代だからこそ、超低金利の融資枠が自分にあるのならば、これを使わないことは非常にもったいなく非合理的だと、筆者の過去の経験からも強く思います。
不動産投資には区分マンションや1棟アパートなど、また新築物件や中古物件などあり、どのような不動産投資が自分に適しているのか、経験や実績のあるFPに1度は相談してみましょう。
FP事務所ストラット
代表 伊豫田 誠
不動産投資専門ファイナンシャルプランナー