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38歳で手取り月53万円のエリート会社員「全額ローン」でタワマン購入…見栄とプライドが招く「老後の悲劇」

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38歳で手取り月53万円のエリート会社員「全額ローン」でタワマン購入…見栄とプライドが招く「老後の悲劇」

38歳で手取り月53万円のエリート会社員「全額ローン」でタワマン購入…見栄とプライドが招く「老後の悲劇」

2023/04/01

 【幻冬舎ゴールドオンライン】で掲載中

https://gentosha-go.com/articles/-/50555

 

国内の大手証券会社に勤務するA氏。「華やかなタワマン暮らし」にあこがれを抱き、38歳のときに1億2,000万円の湾岸エリアのタワマンを1室を購入しました。「退職後は悠々自適なリタイヤ生活を送りたい」と話すA氏ですが、はたしてうまくいくのでしょうか……。見栄っ張りでプライドの高いエリート会社員A氏の事例をもとに、FP事務所ストラット代表の伊豫田誠氏が解説します。

 

◆憧れの「湾岸エリアのタワマン」を購入したA氏だったが…

近年、建設ラッシュが続く東京都内のタワーマンション。一般的なマンションよりも高く存在感があり、美しく、目を引く外観を持っています。また、タワーマンションの入口やエントランス、ロビーなども、豪華で高級感があるところばかりです。

さらに、共用施設としてスパやジム、プール、コンシェルジュサービスなど、一流の設備やサービスが付帯されているところも多くあります。また、建物内にカフェやレストランなどの商業施設が入っている物件もあります。

都内で働く人にとっては、このような華やかな「タワマン暮らし」に憧れを抱く方も少なくないでしょう。A氏も、そのなかの1人でした。

 

タワマン購入後、毎月の収支は「赤字」

 

国内大手証券会社に勤務するA氏は妻と子1人の3人家族です。A氏が38歳(子どもが1歳)のとき、夜景と東京湾が一望できる眺望に魅了され、湾岸エリアのタワーマンションの40階の1室を購入。価格は約1億2,000万円で、35年の全額ローンで購入を決めました。

 

【A夫妻が購入したマンションの概要】

・新築/2LDK/57平米/40階

・最寄り駅徒歩12分

・物件価格……1億2,000万円

・管理費等……2万2,000円

・修繕積立金……9,000円

・頭金……10万円

・35年ローン/金利0.5%/ボーナス100万円/年

 

購入後、毎月の支出は以下になります。

【マンションに関する毎月の支出】

・ローン:24万1,000円

・管理費:2万2,000円

・修繕積立金:9,000円

……合計:27万2,000円

 

A氏の妻は専業主婦のため、A家はA氏の給料だけで生活している状態でした。手取り額は月53万円です。そこから毎月の生活費58万1,500円を引くと、なんと毎月5万円の赤字になっているといいます。

 

【A一家の毎月の支出】

・住宅費:27万2,000円

・交通費:3万円

・光熱費:3万円

・通信費:1万3,000円

・保険料:3万円(貯蓄型)

・学資保険:1万6,000円

・食費:6万円

・遊行費:10万円

・雑費:3万円

……合計:58万1,000円

 

この毎月5万円の赤字はボーナスで穴埋めをしていて、その他ボーナスからの出費を引くと、年間でみると約50万円の黒字になっているそうです。しかし、もちろんなんらかの理由でボーナスが減額されれば、すぐさま窮地に追い込まれることになります。

将来、妻がパートに出るなどして収入を増やすことも考えられますが、仮に子どもが増えればパートどころではなく、反対に生活費は増えていきます。

マイホームに寄せる思いは人それぞれですが、A夫妻から相談を受けた筆者は「よくこの状況でタワマンを購入したものだ」と内心考えてしまいました。

 

◆A氏が語る「理想の老後」は“絶望的”

タワマンを購入したことでA家の家計は火の車ですが、A氏の希望は「65歳で退職したのち、悠々自適なリタイヤ生活を送ることだ」といいます。

しかし、A氏が65歳の時点で、住宅ローンの返済は8年間、約2,900万円の返済が残っています。この8年分の住宅ローンと生活費を、年金だけでまかなうのは困難でしょう。したがって、A氏はこの時点で「残債を一括返済してしまえばよい」と考えていました。

 

A氏の考えはこうです。「65歳時点で貯まっているであろう保険貯蓄が約1,500万円と、もらえるであろう退職金が約1,500万円ある。住宅ローンの残債2,900万円をこれらを使って一括返済しても、手元に100万円が残る。

さらに、仮に毎年50万円の黒字を27年間維持できていれば、現金でも1,350万円の貯金ができるはずだから、100万円と合わせて、老後資金は1,450万円準備できている計算だ」

 

……しかし、当然ですが、退職金が満額入るかは不透明ですし、1,450万円も老後資金としては足りないことが予想されます。

 

A氏は、こんなぼんやりとした予測でタワマンの購入に踏み切ったそうですが、最悪の場合、貯金がまったくできずに老後資金が500万円未満なんてことになれば、悠々自適な老後生活は夢物語に終わります。

 

さらに、住宅ローンが返済できても、管理費と修繕積立金の支払いは続きますし、年々その額も上がっていきます。実際にどれくらい上がるのかは、マンションによって差が大きく一概にはいえませんが、近年のペースで物価が上昇すれば、当然に維持管理コストも上昇するでしょう。65歳時点で1.8倍近くに、さらに80歳時点では2倍近くになっている可能性もあります。

 

【予想される管理費と修繕積立金の値上がり】

購入時       65歳    80歳
管理費:2.2万円 ⇒ 4万円 ⇒ 4.4万円
修繕積立金:0.9万円 ⇒ 1.6万円 ⇒ 1.8万円
合計:3.1万円 ⇒ 5.6万円 ⇒ 6.2万円

 

資金面の他にも、高齢者のマンション暮らしには防災や防犯面でのリスクがあります。マンションは耐震性能や耐火性が高いですが、災害によっては避難が必要になり、エレベーターが止まってしまうと高齢者の避難は困難を極めます。

また、マンションは人との交流があまりない場合が多く、高齢になると友人や家族との接触も減少し、いざというときに近くに頼れる知人がおらず避難に遅れが出ることも考えられます。

 

◆リスクを少しでも回避…老後資金を「不動産投資」で運用すると

A氏の場合、一括返済はリスクが大きいと考えます。したがって、仮にA氏のケースで、65歳で一括返済は行わず、不動産投資で運用した場合を考えてみましょう(ここでは、簡易的に計算します)。

 

保険貯蓄約1,500万円、退職金約1,500万円、余剰貯金1,350万円、合計4,350万円で、利回り8%の不動産を購入すると年間348万円(29万円/月)の家賃収入になります。

 

実際には、実質利回りは1~2割ほど落ちる可能性はありますが、65歳から家賃収入と年金で生活できれば、住宅ローンが終わる8年後の73歳からは、毎月29万円の家賃収入と年金で暮らすことができ、一括返済をするよりも豊かな暮らしができるかもしれません。

 

いつの時代も、マイホームの購入には資金面だけでは決められない思いや考えがありますが、末永く愛着を持って住んでいける選択ができることを願っています。

 

 

伊豫田 誠

FP事務所ストラット

代表/不動産投資専門ファイナンシャルプランナー

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