手取り45万円・54歳会社員の夫急逝…〈遺族年金支給額〉をみた妻「死ぬまで働くしか」
2022/12/22
https://gentosha-go.com/articles/-/48013
「遺族年金」とは「家族を養っていた人が亡くなった際、残された家族に対して年金が支給される」という制度です。この制度を聞いたことがある人は多いでしょうが、いざ自分がもらう立場になったとき、実際にいくらもらえるかわからないという人は少なくありません。そこで今回、FP事務所ストラット代表の伊豫田誠氏が、54歳の夫を亡くしたAさんの事例をもとに、遺族年金と「万が一の事態」への備えについて解説します
◆快適な社宅暮らしも夫急逝…生活が激変したAさん
手取り45万円、子ひとりのA夫妻。社宅住まいで悠々自適な生活をしていましたが、Aさん夫(54歳)の急逝により住居がなくなり、急遽アパート住まいを余儀なくされました。保険金は出たものの、現在17歳の子供の進学資金に消えそうです。
自分の老後資金は遺族年金が頼り……そう思っていたAさんでしたが、遺族年金の支給額をみて愕然。悲しむ暇もなく「辛い労働生活」を送るハメになったのです。
◆「社宅住まい」のメリットとデメリット
社宅とは、企業が従業員に対して貸し出している住居のこと。
社宅に住むメリットとしてまず挙げられるのは、賃料が安いことでしょう。どれくらい割安なのかは物件や企業によって差がありますが、「5,000円~2万円」ほどで住めるケースや、最大○万円まで企業が負担、家賃の数割を企業が負担してくれるなどのケースが多いようです。また、敷金や礼金も必要ないケースが多いです。
さらに、「一定額の家賃(賃貸料相当額)」を支払っていれば、その金額が所得から天引きされるため節税につながるところもメリットといえます。
企業側としては、社宅があることで「福利厚生が充実した企業」というイメージにつながることもメリットといえるでしょう。
一方、社宅に住むデメリットとしては、
・好みの物件や間取りを選ぶことができない
・職場とプライベートの区別が曖昧になる
・退職した場合には、社宅から退去しなくてはいけないため、その後の生活の変化に対応する必要がある
などが挙げられます。
今回のA夫妻のケースのように、勤めていた方が突然亡くなってしまった場合も急に生活が変わってしまうため、もしものときに備えておく必要があります。しかし、準備が不十分な家庭も多いのではないでしょうか。
そこで、万が一に備えた資金準備について考えてみましょう。
◆国の社会保障制度、「遺族年金」の種類と詳細
まずベースとなる国の社会保障制度には、配偶者の突然の死去に備えて「遺族年金」の制度があります。
この遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があり、亡くなった方が国民年金か厚生年金のどちらに加入しているかで決まります。
【遺族基礎年金】
国民年金に加入していた場合、遺族基礎年金の対象となりますが、子どもがいない場合は給付がありません。
子供がいる場合は、年額77万7,800円を基本額とし、子ども2人まで1人につき年額22万3,800円、3人目からは年額7万4,600円が、子どもが18歳になる年度の3月31日まで加算されます。
※出所:日本年金機構
【遺族厚生年金】
亡くなった方が厚生年金に加入していた場合には、「遺族厚生年金」の対象となります。
遺族厚生年金は、子どものある配偶者が一定の条件を満たす場合は「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の両方が、そうでない場合には「遺族厚生年金」のみが支給されます。具体的な条件や金額は家庭状況や被保険者の収入によって変わってきますので、自身で確認しておきましょう。
【寡婦年金】
夫が亡くなったとき、その配偶者が「40歳以上65歳未満」でかつ生計を同じくしている子どもがいない場合と、上記のように遺族厚生年金・遺族基礎年金を受けていた子どものある配偶者が、受給期限に達したなどして、遺族基礎年金を受給できなくなった場合に支給されます※。
※詳細は日本年金機構HPをご確認ください。
https://www.nenkin.go.jp/index.html
今回のA夫妻のケースは、夫の給料が45万円で配偶者と子ども1人でしたので、遺族厚生年金の支給額は子供が18歳(18歳になった年度の3月31日)まではおおよそ月額14万円前後、それ以降は妻のみが月額6万円前後となります。
そのため、社宅を退去して新たに賃貸物件に入居すると考えた場合には、妻は仕事に就く必要が出てきます。
しかし、これまで専業主婦だった人にとって、十分なキャリア無くこの年齢から満足な給料が得られる職は少なく、労働時間で補うしかありません。
子どもが大学を卒業するまでの生活費は絶対に必要になりますし、Aさんの場合子どもが1人暮らしをして大学に通うため仕送りが必要です。
Aさんは少しでも収入を増やそうとダブルワークをしていたようですが、疲れて帰っても家には夫も子どももいません。Aさんは朝から晩まで続くダブルワークの毎日に、心身ともに疲れ果ててしまいました。
◆万が一の備えの基本は「生命保険」
生命保険は、まさに家族の突然の不幸に備えておく仕組みです。この生命保険で「死亡保険金」の準備を考えてみると、仮に30歳の時点で「30年満期の貯蓄型生命保険500万円~2,000万円」を準備した場合、毎月の保険料は約1万5,000円~6万円ほどになります。
掛け捨ての保険ではなく貯蓄型にしておけば、万が一のときにも、あるいは生存して満期を迎えたときでも保険金を受け取ることができます。
ただし、貯蓄型を選んで万が一がなかった場合、子供が大学進学するなどした際解約して学費に充てるわけにはいかないため、学費は別に準備しておいたほうがいいでしょう。
その場合は学資保険を活用してはいかがでしょうか。子供が産まれてから高校卒業までの約18年間加入した場合、毎月の保険料1万3,000円ほどで300万円用意できます。この間に生計者の死亡など万が一のことがあれば保険料の払い込みは必要なくなり満額が受け取れますし、子どもの人数が増えても対応できます。
このように、貯蓄型生命保険と学資保険両方に加入すれば十分な保障金額を準備できますが、毎月の保険料で生活を圧迫してしまうのが悩ましいところです。反対に、保証金額を抑えると万が一のときに足りなくなってしまいます。どちらを重視すればよいのでしょうか。
筆者が、Aさんのように夫や妻が亡くなり生活に困ってしまった方とお話ししてきた印象では、やはり十分な保障金額を準備しておけばよかったと話す方が多いです。
家族が健在のときに支払う保険料の負担よりも、家族を失ったあとの資金面の負担のほうが長くて辛いと感じるようです。
◆不動産投資を利用して負担のない準備をするのも手
そこで、毎月の保険料負担を軽くするために活用したいのが「不動産投資」です。一見、保険とどんな関係があるのかと感じますが、実は不動産投資には生命保険の効果があるのです。
不動産投資を行う際は銀行融資を活用しますが、このとき「団体信用生命保険」に加入します。万が一のときに不動産ローンが完済されれば、それ以降は遺族年金のように家賃が受けとれるようになるのです。
不動産投資を活用した場合のシミュレーション
仮に、下記のような中古ワンルームマンションを頭金10万円、残りは銀行融資で購入した場合を考えてみましょう。選ぶ物件は価格を少し抑える方向で、都心より少し離れたエリアがおすすめです。築15年前後の物件で考えれば、ほとんど現金を使うことなく生命保険と同様効果を得ることができます※。
※物件や銀行融資条件等は、専門業者やFPにご確認ください。
・中古ワンルームマンション:価格1,600万円、賃料69,000円
・利回り:5.17%
・立地:練馬区/地下鉄赤塚駅徒歩5分
・築15年、23㎡
・購入プラン頭金10万円、銀行融資1,590万円 金利1.6%、期間35年
・月収支プラス1,500円=(賃料69,000円-ローン返済額50,000円-管理費修繕積立等17,500円)
今後、空室や家賃下落の可能性はありますが、同等保障額を生命保険で現金で準備するより負担が少ないため、現実的にどちらの負担が少ないかを自身の状況に置き換えて考えることが必要です。
もし同じような物件を、もう1軒購入できるようなら増やしておくと保険効果をさらに上げることもできます。
もちろん不動産投資にリスクはありますが、現金で全部準備するリスクもあります。表面的な情報や意見に惑わされないようにするためにも、不動産投資の知識や経験があるFPに相談することも重要ですね。
FP事務所ストラット
代表 伊豫田 誠
不動産投資専門ファイナンシャルプランナー