年収600万円の35歳サラリーマン「練馬3,000万円マンション購入」も赤字…確定申告で「助かった」
2023/02/09
https://gentosha-go.com/articles/-/49064
毎年2月16日~3月15日の間で提出する確定申告の時期が近づいています。個人事業主はもちろんですが、サラリーマンも該当する支出等があれば確定申告を行う必要があり、その結果で税金が還付されることがあると、FP事務所ストラット代表の伊豫田誠氏はいいます。サラリーマンが実践可能な「節税」について、事例から詳しくみていきましょう。
◆「サラリーマン節税」とは
サラリーマンや公務員など会社と雇用関係にある方は、所得税と住民税は毎年の年末調整で会社が計算して給料から天引きされ支払います。そのため、多くの方は給料明細に記載されている金額をそのまま支払っています。
しかし特定の出費や投資を行うと、この所得税と住民税の額を減らせる場合があり、このことが一般的にサラリーマン節税と言われています。
たとえば、年末調整に含まれない下記の所得控除に該当する出費を確定申告すると、支払う税金が減額されます。
① 医療費控除
② 雑損控除
③ 寄付金控除(ふるさと納税ワンストップ特例以外)
さらに、サラリーマンでも個人で負担した経費が控除される、特定支出控除と言う制度があり、対象となる経費は下記になります。
① 通勤費
② 転居費
③ 研修費
④ 資格取得費
⑤ 帰宅旅費
⑥ 勤務必要経費(図書費・衣服費・交際費等)
この特定支出控除額は、下記の式で算出します。
特定支出控除額=特定支出の額の合計額-給与所得控除額×1/2
出所:国税庁HP(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1415.htm)
申請には、勤務先からの証明書が必要となり内容も複雑となるため、ここでの解説は割愛しますが、大きな出費があった時には忘れずにチェックしておきましょう。詳しくは国税庁HPや会社の経理等でご確認ください。
そのほか、投資で所得控除が適応されるものとして「iDeCo」があります。iDeCoとは個人型確定拠出年金を指し、毎月積み立てて行くと年間の掛け金について全額が所得控除となり、所得税や住民税が減額されます。さらには、運用中の利益や受け取り時にも税金の軽減があります。
また、不動産投資の場合は損益通算という仕組みで税金が減額される場合があります。ここからは、年収605万円の35歳・大卒サラリーマンS氏の事例をもとに、不動産投資の節税の仕組みについて説明していきます。
◆不動産投資による節税の仕組み…S氏の場合
投資用の不動産を購入すると、収入と支出が発生します。そのため毎年、確定申告(白色)を行いますが、その申告内容に収支内訳書(不動産用)を作成して提出します。
この収支内訳書は文字通り不動産投資で発生した家賃収入と、維持費などの経費(支出)を記載しますが、収入より支出が多ければマイナス収支となり、損益通算によって所得控除と同じような効果が発生し、税金(所得税・住民税)が軽減されます。
この損益通算とは「不動産所得」「事業所得」「山林所得」「譲渡所得」の所得に関しては、他の所得とあわせて計算するという制度で、つまり不動産投資の収支内訳書でマイナス収支になってしまったら、サラリーマンの場合は給与所得と損益通算され、節税につながるというわけです。
理解しておきたい点は、不動産投資の収支内訳書上でマイナス収支になっても損をしているわけではなく、会計の仕組みによるものということです。ここでの詳細説明は割愛しますが、実際に不動産投資をはじめる場合には、FPや不動産会社で確認しましょう。
次に、S氏の場合を参考に説明していきます。
◆S氏が購入した不動産
東武練馬駅から徒歩10分
新築ワンルームマンション29.6㎡
2,950万円金利1.65%35年払い
初期費用80万円
●毎月の収支(キャッシュフロー)
契約賃料10.1万円
ローン支払い9.2万円
管理、積立金、設備保証等0.6万円
管理代行手数料0.3万円
合計収支額±0円
●経費初年度(9ヵ月分)
・購入時諸費用80万円
・減価償却費60万円
・借入利息36万円
・租税公課15万円
・管理修繕費14万円
・経費計205万円
・家賃収入91万円
合計収支-114万円
このように、今回の不動産投資では毎月の収支は±0円に対して、初年度の確定申告の収支内訳書では年間-114万円のマイナス収支となります。
ポイントは減価償却費と言う経費で、購入したマンション価格2,950万円を初年度に一括で経費計上されず、法律に定められた年数で割って、分割で経費計上していく仕組みのため、毎年の経費計上となります。
●S氏の給料
総支給額605万円
給与所得控除後の金額440万円
所得控除の額の合計額137万円
源泉徴収税額21万円(所得税)
住民税30万円
◆年収605万円、S氏の「節税額」は
所得税と住民税を算出するためには、はじめに課税所得額を算出します。文字通り、課税される所得の額のことですが、下記の式で計算します。
課税所得額303万円=給与所得控除後の金額440万円-所得控除の額の合計額137万円
課税所得額303万円がわかれば、所得税と住民税は下記の式で算出できます。
所得税20.5万円=課税所得額303万円×所得税率
住民税30.3万円=課税所得額303万円×10%
所得税+住民税=50.8万円
[図表]所得税率早見表出所:国税庁HP(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm)
ちなみに、給与所得控除後の金額がなぜ440万円となっているのかは、下記の計算式で確認できます。
総支給額605万円-給与所得控除額(※)=給与所得控除後の金額440万円
給与所得控除後の金額440万円=総支給額605万円-(605万円×20%+44万円)
※給与所得控除額(令和2年分以降)
1,625,000円まで550,000円
1,625,001円から1,800,000円まで収入金額×40%-100,000円
1,800,001円から3,600,000円まで収入金額×30%+80,000円
3,600,001円から6,600,000円まで収入金額×20%+440,000円
6,600,001円から8,500,000円まで収入金額×10%+1,100,000円
8,500,001円以上1,950,000円(上限)
出所:国税庁:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1410.htm
不動産投資の結果、本来の課税所得額303万円から収支内訳書の-114万円を損益通算すると、課税所得額は189万円に下がり、新たな所得税と住民税は下記となります。
所得税9.4万円=課税所得額189万円×所得税率
住民税18.9万円=課税所得額189万円×10%
所得税+住民税=28.3万円
50.8万円-28.3万円=22.5万円
つまり、S氏の場合、不動産投資を行った結果22.5万円の節税となりました。これにはS氏も驚き「赤字で不安だったけど助かった」と上機嫌でした。
今回事例に挙げたワンルームマンション投資の場合、次年度以降の節税額は年々減少していき、節税効果としては薄れてしまいます。しかし、不動産投資と確定申告の仕組みを体感的に理解し、所得税や住民税について学べることは非常に良いことでしょう。
高い節税効果を活用したい人は、築古の中古アパートという方法もあります。中古アパートへ投資する場合、耐用年数の4年間で大きく減価償却費を計上すケースもあり、年収1,500万円を超えるサラリーマンの節税には有効です。
今後の政府の政策によっては、これらの経験が活かせる場面もあるかもしれませんし、給与所得が上がった時の税金対策に活かせるかもしれませんので、節税額の大小にとらわれず、日頃から経験として税金のことを学んでおくと良いかもしれません。
FP事務所ストラット
代表 伊豫田 誠
不動産投資専門ファイナンシャルプランナー