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年収980万円の35歳・エリート会社員「初めての確定申告」終えてひと安心も…数週間後「税務署から質問攻め」にあったワケ

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年収980万円の35歳・エリート会社員「初めての確定申告」終えてひと安心も…数週間後「税務署から質問攻め」にあったワケ

年収980万円の35歳・エリート会社員「初めての確定申告」終えてひと安心も…数週間後「税務署から質問攻め」にあったワケ

2023/03/12

 【幻冬舎ゴールドオンライン】で掲載中

https://gentosha-go.com/articles/-/49954

 

3月15日に迫った確定申告期限。手続きの煩雑さから、つい後回しにしているという人も少なくありません。そこで今回、FP事務所ストラット代表の伊豫田誠氏が、初めての確定申告で苦い経験をしたT氏の事例をもとに、確定申告で陥りがちな「3つの苦戦ポイント」を解説します。

 

◆年収982万円会社員、節税効果を求め「不動産投資」をスタート

T氏は大手企業に勤める名古屋在住の会社員だ。結婚して子供が1人いる。子供ができたことでお金がかかるようになり、少しでも節約できることはないかと調べていた。

 

【T氏の状況】

・年収……982万円
・所得税……68万円
・住民税……55万円

 

年収が982万円ともなると、年間を通して納める額は所得税と住民税で合計123万円にのぼり、その金額の大きさに驚く。T氏はどうにかしたいと思っていたものの、給料から天引きされるため半ば諦めていた。

周りも同じように税金を納めていると思っていたが、どうやらそうでもないらしい。会社の同僚によると、「不動産投資は節税効果があり、毎年税金の還付を受けている」というのだ。そこでT氏は早速、弊社の不動産投資セミナーに参加して不動産投資の仕組みを学び、自身も不動産を購入した。

 

【T氏が購入した物件概要】

・東京23区内/最寄り駅徒歩10分
・新築1Rマンション/27.5m2
・価格……3,470万円
・頭金……10万円
・諸費用……80万円
・銀行融資……3,460万円/金利1.6%/35年ローン

 

不動産投資における節税効果は物件の種類や購入方法により変わってくるが、一般的に節税効果に大きく影響する経費として、「減価償却費」と「借入利息」が挙げられる。

T氏の場合は、初期費用は抑えて始めたいという希望から、フルローンで融資が受けやすい都内の新築ワンルームマンションを選択した。ローン金額は大きいが、その分の借入利息が節税効果につながる。また、最寄り駅から徒歩10分と少し離れた場所の物件にすることで、物件価格の土地と建物の割合において建物価格が高くなり、減価償却費が大きく取れる点で節税できる。

 

さらに新築にしたことで、減価償却費は躯体(47年償却)と設備(15年償却)に分けることができ、前半の15年間の節税効果が大きくできる。

 

・物件価格……3,470万円
・土地建物割合……土地1,410万円、建物2,060万円
・建物価格内訳……躯体1,483万円(47年償却)、設備577万円(15年償却)

 

注意したいのは、仮に同条件の不動産を購入しても、所得が高くなるにつれて節税効果が大きくなるという点だ。そのため、自身の所得金額を考慮したうえで節税効果を重視する物件にするかどうか決断するべきである。

不動産を購入したことで、T氏は「確定申告」を行う必要が出てきた。

 

会社員のT氏は確定申告をしたことがなく、税理士に依頼することも考えたが、同僚は「国税庁ホームページのなかに無料で確定申告書を作成できるページがあるから、そこで簡単に作れる」と言う。たしかに、少なくない税理士費用を考えると、簡単に作れるならチャレンジするのもいいかもしれない。

こうして「初めての確定申告」を行うことになったT氏。しかし予想以上に、確定申告は苦難の連続だった。

 

 

◆初めての確定申告…T氏が苦戦した「3つ」のポイント

1.必要書類の整理

確定申告をするにはまず、収入(売上)と支出(経費)がわかる明細書や請求書、領収書といった、申告に必要な数字を集計する必要がある。

T氏が投資している不動産に関しては、購入した会社から1年間の収支が集計された一覧表が送られてきたため、これを見て作成すればよい。そのほかにも、不動産投資のために勉強した書籍や、情報を調べるために利用したパソコンやインターネット費用も経費になると聞き、それらの領収書や請求書もまとめておいた。

 

「これで大丈夫だろう」と思ったが、投資用不動産ローンの返済予定表を紛失していることに気づいた。これでは支払った金利分がわからないため、銀行に再発行をお願いした。

また、T氏は趣味でやっていた革細工を副業にしようと考えていた。まだ販売はしていないものの、準備段階で必要経費になりそうな領収書や請求書、支払い履歴等をT氏はまとめておかなかったため、それらを探したり、再発行したりするのに手間を要した。

 

このように、確定申告直前に必要書類を集めようと考えていると、見つからなかったり忘れていたりで、正確な数字がわからなくなってしまう恐れがある。確定申告を見据え、毎月コツコツと集計しておくことが重要だ

 

2.確定申告書の作成

確定申告書は前述のように、国税庁のホームページ上で作成することができる※。

※ 参照:国税庁HP「確定申告書等作成コーナー」

 

T氏は同僚から、「簡単に作成できる」と聞いていたが、いざ「ご利用ガイド」を参考に作成しようとすると、わからない用語が次から次へと出てきた。最初のうちはその都度ネットで検索して調べていたが、それでもわからないことが続くとイライラが募る。

 

さらに1人で作成していたT氏は、入力した項目も正しいのか間違っているのかわからなくなり、ついにホームページ上での作成を断念してしまった。

 

その後、必要になるであろう書類をすべて持って管轄の税務署に駆け込み、職員にマンツーマンで作成を手伝ってもらった。しかし不足している書類があり、不備が出るたびに自宅と税務署を5回ほど往復することに。その後、ようやく手書きで確定申告書を完成させ提出することができた。

 

ホームページ上での確定申告書の作成が難しい場合、毎年確定申告の時期になると各地域自治体に相談窓口が設置され、そこでサポートを受けることができる。しかし、ここでも必要書類をまとめておかないと2度3度と足を運ぶことになるため、準備が重要だ。

頑張って確定申告書を完成させたかいがあり、節税金額は約40万円に。ご満悦のT氏であった。

 

◆数週間後、突如届いた税務署からの「お尋ね状」

3.税務署からの「お尋ね」

T氏は無事に確定申告が終わり「これで一安心」と思っていたところ、数週間後に税務署から1通の封筒が届いた。まさかの、税務署からの「お尋ね状」である。驚いたT氏は急いで内容を確認すると、「確定申告の資料を持って税務署にお越しください」とあった。

実は確定申告書を提出した際、少し疑問に感じていたことがあったT氏。記載した項目や数字になにか間違いがあったのだろうか。

 

税務署に行って話を聞いてみると、副業についてのお尋ねであった。「売り上げが0円に対し、経費が96万円ほど計上されているが、これは本当に副業を行っているのか」と確認された。

 

T氏のように、自宅の一部を使用して事業を行う場合は、事業使用分を按分(あんぶん)して経費計上することができる。按分とは「割合に応じて分けること」で、使用面積や使用時間など個々の判断で計算して、経費計上を行う。だが、これには相違が生じやすい。T氏もこの判断に疑問があった。

 

【T氏が計上した経費(96万円)の内訳】

家賃:120万円 → 60万円

水道光熱費:24万円 → 12万円

通信費:12万円 → 6万円

材料費:18万円 → 18万円

 

T氏は税務署職員の確認に、「自宅で趣味の革細工を行っており、製作作業に必要となった経費を計上したが、まだ革細工は売れていない」と説明。しかし、税務署職員の「どこで販売しているのか?」「宣伝活動は行っているのか?」との質問責めに辟易。実際はまだ販売活動を行っていなかったため、結局副業とは認めてもらえず、今年度の経費計上は取り下げになった。

最終的に、約40万円あったはずの節税金額は20万円ほど失われてしまった。

 

しかしT氏は、「確定申告の仕組みを知ることができたことはいい経験になった」と振り返る。翌年は革細工の販売をスタートさせ、少しずつ売り上げを伸ばしていきたいと意気込んでいる。

その後T氏は、手書きで作成した確定申告の内容を、国税庁ホームページ内の「確定申告作成ソフト」へ入力した。来年度こそは、簡単に作成することができそうである。

 

 

伊豫田 誠

FP事務所ストラット

代表/不動産投資専門ファイナンシャルプランナー

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