年収900万円、30歳エリート証券マンの凋落…余裕のタワマン暮らしから一転、破産の危機
2022/10/06
https://gentosha-go.com/articles/-/45811
タワマンに住むことに憧れる人は少なくありません。エリート証券マンのA氏もそのうちの1人で、「タワマンに住んでいる」ことをステータスのひとつとして華やかな交友関係を楽しんでいました。しかし、あるきっかけから「破産の危機」に陥ってしまいます。そのワケは、A氏の悲劇とその後の生活をみていきましょう。
◆ 60階建てタワマンで悠々自適…エリート証券マンA氏
2022年夏、以前に飛び込み営業で会社に訪れた証券マンA氏から、久しぶりの電話が入った。また投資の営業かと思いながら電話をとると、「お久しぶりです……じつは相談したいことがあります!」と声を荒らげている。なにやら問題を抱えているようだった。
A氏は筆者と知り合った当時30歳の独身で、大手証券会社に勤めるエリート証券マンだった。3年ほど前に名古屋から東京へ転勤になったのだが、東京では順調に営業成績を積み上げ年収は900万円超え。ついに内勤のエリート街道に乗ったことを期に、西新宿に建つ60階建てタワーマンションの40階、間取り1LDKの物件(約5,500万円)を購入して暮らしていたそうだ。
最近、A氏のように独身でも住宅を購入する人は多い。超低金利が続く日本では、住宅ローンは金利0.4%程度で、さらに住宅ローン減税(A氏の場合約400万円)もあるため、賃貸よりも購入するほうがお得感が強い。
そんなA氏はタワマンで悠々自適な暮らしを楽しんでいたが、思わぬことが起きる。
◆ 「できちゃった婚」から急展開…破産の危機に
「独身エリート証券マン、タワマン40階暮らし」の肩書きは効果絶大で、交友関係は華やかになった。連日飲み会や会食に大忙しだったが、その甲斐あってか不思議と仕事の人脈には困らなかったそうだ。
A氏はこのまましばらく独身を続けていたいと考えていたが、ある日付き合っていた女性からまさかの告白があった。
「子供ができた。しかも双子みたい。」
いずれはこの女性と結婚しようと考えていたため、意外にもA氏に迷いはなかった。挙式はできないまま「できちゃった婚」で入籍を済ますと、妻は無事に出産。1年も経たぬうちにタワマンでの新婚生活がスタートした。
結婚生活は幸せそのものだったが、双子の育児と仕事に追われる毎日が数ヵ月続いたある日、突然とんでもない連絡が入った。妻の母親がクモ膜下出血で倒れたという。
妻の父親はすでに他界しており、親兄弟や頼れる親族はいない。妻は1人っ子のため、義母の対応は必然的に妻にのしかかる。義母はなんとか一命をとりとめたものの、寝たきりの要介護状態となってしまった。さらに義母の貯蓄や保険は少なく、千葉の借家で介護を受けるのも困難な状態であった。
A氏も、いままで散々華やかな暮らしをしてきたおかげで貯金は少なく、生命保険にも入っていない。証券マンだったが、株式投資も会社の規則で売買に制限があり、社内手続きの手間などもあって行っていなかった。
それでも、この状況にあってはそうはいっていられない。急いで知り合いの保険営業マンに連絡し生命保険に加入した。しかし、病気になってからでは保険に入りにくいことや、同じ保障内容でも若いうちから加入しておくと保険料が安いことは、その日まで知らなかった。
その後A氏は、妻から義母と同居して介護と育児をしたいと相談を受け、タワマンを売却。郊外の千葉に引っ越すことを決めた。
「これで万事休すか、この先どうすれば……」と思っていたA氏だったが、意外な展開があった。
◆ タワマン売却で「1,500万円」の利益…なぜ?
購入して2年ほど住んでいたタワマンだったが、赤字を出さずに売却できればと思っていたところ、まさかの「1,500万円プラス」で売却ができた。購入した2020年夏ごろはちょうどコロナ不況とオリンピック前の値下がり時期で、1~2割ほど安く購入できていたそうだ。
その後、オリンピックが終わっても不動産価格は下がらず、コロナ不況からも回復してきた当時、購入時より不動産市場は2~3割上昇していたのだ。
これにはかなり驚いたが、幸運にもA氏はこの1,500万円を活用し、なんとか千葉に築30年の3LDKマンションに引っ越すことができ、家族4人と義母と同居する運びとなった。
しかし、もう独身のころのように華やかな生活はできないとA氏は考えた。節約生活のなかで残ったお金はすべて貯金にまわし、このままつましい生活が続くのかと悲観する日々が続いている。
◆ 節約・貯金では防げない…破産の危機を救う「不動産投資」
このケースでは偶然にもマイホームによって売却益を得ることができたが、通常の不動産投資でも同じことがいえるのではないかと考え、久しぶりにA氏は筆者に連絡をしてきたのだった。
「異次元金融緩和」と「マイナス金利政策」により、大手企業に1年以上勤務し年収が500万円を超えている場合だと、不動産投資の融資を受けやすい。しかし、活用している人が非常に少ないのが現状だ。
また、不動産投資は生命保険代わりになることも知られていない。
不動産投資で銀行融資を受ける場合、「団体信用生命保険」に加入するのだが、これにより融資を受けた人に万一のことがあった場合に保険から残債が完済されるため、借金のない不動産を遺族に残せるようになっている。
さらに死亡だけではなく、今回のような要介護状態や長期の生活習慣病、がん等と診断されても完済されるため、一般の生命保険に加入するよりも非常に安く同等以上の保障を得ることができるのだ。
A氏のように働き盛りであり子育て世代でもある30~40代の期間はなかなか貯金を増やしていけない一方、銀行融資を活用して資産を増やすことができるよう、金融や経済の仕組みが設計されている。
また、不動産価格が上がっていたのは過去のことと思われがちだが、中長期的には不動産価格は上がり続けている。
むしろ下落が続いたのはバブル崩壊後の1990年~2000年ごろの10年ほどだけで、その他の期間、価格は上下に揺れながら緩やかに上昇を続けている。
それもそのはずだ。世界規模でお金の量は増え続け、経済も成長を続け、物価も上昇し続け、米国は利上げを決定している。日本の物価も中長期的には上昇が続くのは当然のことなのだが、長引く不況でインフレ経済の感覚が薄れてしまっているのかもしれない。
9月21~22日に行われた日銀の金融政策決定会合でも、現状の大規模な金融緩和政策の維持が決定された。今後2~3年間続ける意向も示されており、実に2013年から10年以上続く見通しである。
私たち日本人もそろそろインフレマインドに切り替え、節約と貯金だけで老後資金を準備するのは困難だと認識しなければならない。
伊豫田 誠
FP事務所ストラット
代表/不動産投資専門ファイナンシャルプランナー